消化性潰瘍治療薬

@胃や十二指腸の粘膜が痛めつけられたのが消化性潰瘍。粘膜が弱くなったか、胃液の分泌が多くなりそのバランスがくずれたために生じる。圧が高いからといってすぐに降圧薬を投与するとはかぎらない。

A薬物療法は粘膜の防御能力を増大させる作用のものと、胃液分泌を抑制する作用のものを使って行われる。
攻撃因子:塩酸(胃酸)、ペプシン、ガストリン、ヒスタミン、アセチルコリン、アルコール、ストレス、喫煙、ヘリコバクターピロリ感染、抗炎症薬等
防御因子:粘膜、粘液、粘膜血流、プロスタグランジン、CGRP等


★攻撃因子抑制薬
●プロトンポンプ阻害薬:塩酸を作る酵素であるプロトンポンプを阻害し、胃酸の産生を抑制。:オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール
●H2遮断薬:プロトンポンプを活性化させるヒスタミンの作用を止め、胃酸の産生を抑制。:シメチジン、ラニチジン、ファモチジン
●選択的ムスカリン受容体拮抗薬:迷走神経のM1受容体に選択的に拮抗し、胃酸の産生を抑制。:ピレンゼピン
●抗ガストリン薬:プロトンポンプを活性化させるガストリンの作用を止め、胃酸の産生を抑制。:プログルミド、セクレチン、ウロガストロン
●酸中和薬:アルカリ性の薬物服用により胃酸を中和。:沈降炭酸カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
●ヘリコバクターピロリ除菌薬:胃炎、胃潰瘍、胃癌の原因の一つとして考えられているHelicobacter Pyloriを除菌し、胃炎、胃潰瘍、胃癌の発生、再発を抑える。:プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール・ランソプラゾール)、クラリスロマイシン、アモキシシリンの3剤併用

★防御因子強化薬
●潰瘍病巣保護薬:潰瘍部を薬物が覆い、酸やペプシンの接触を防ぐ。:スクラルファート、アズレン
●組織修復促進薬:肉芽形成促進効果により、潰瘍部の修復を早める。:アルジオキサ、ゲファルナート、エカベトナトリウム、L-グルタミン
●粘液産生・分泌促進薬:粘液の産生を促進し、防御能を高める。:テプレノン、プラウノトール、オルノプロスチル、エンプロスチル、レバミピド
●胃粘膜微小循環改善薬:胃粘膜の微小循環を改善し、防御能を高める。:塩酸セトラキサート、ソファルコン、スルピリド、塩酸ベネキサートベータデクス

B粘膜を守る5つの方法は、病巣の保護、組織修復の促進、粘液分泌の促進、粘膜の微小循環の改善、プロスタグランジンの増加をはかる。
1)潰瘍病巣部位保護作用:
 潰瘍病巣に薬がくっついて,その部分をベールで包むようにして胃液などの刺激から守ろうとする。アルサルミン(スタラルフアート)
2)内芽形成促進作用:
 病巣部分の肉芽形成を促進するなどによりその部分の組織の治癒を早める。アスコンプ・イサロン
3)粘膜分泌促進作用                  
 粘膜表面を潤している粘液自体に防御作用があり、粘液分泌を盛んにすることにより防御作用を強化。セルベックス
4)粘膜微小循環改善作用
  粘膜は必要となる酸素やエネルギーを血液によって補っている。血液循環を強化することにより粘膜を強化。
5)プロスタグランジン作用(サイトプロテクション作用)
胃酸分泌を抑制する投与量では、副作用として「下痢」がおきてたが胃酸分泌を抑制しない程度の少量のプロスタグランジンが、胃粘膜を防御する働きを持っていることが判明した。
初級薬理学
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