アンジオテンシンII受容体拮抗薬について


循環系RA系では、循環血液中で、肝で合成されたアンジオテンシノーゲンが、腎で分泌されるレニンによりアンジオテンシンT(AT)に変換されます。ATは肺や血管内皮細胞にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンU(AU)になります(右図)。

組織RA系では血管、腎臓、脳、副腎、卵巣などの局所で産生されたアンジオテンシノーゲンが、局所で産生されたレニンによりATに変換されます。ATからAUの変換には局所のアンジオテンシン変換酵素(ACE)あるいはキマーゼによりおこなわれます。AUの分解はペプチダーゼによりAV、AW、アンジオテンシンに分解されます。

レニン-アンジオテンシン系
アンジオテンシノーゲン

レニン(腎)

アンジオテンシンT

組織のキマーゼ

ACE(肺、血管内皮)

アンジオテンシンU
アンジオテンシンU受容体
AT1受容体
AT2受容体
血管収縮
血圧上昇
アルドステロン分泌
利尿作用
細胞増殖
血管拡張
血圧下降
NO産生
細胞増殖抑制
アポトーシス促進

AUに対する受容体には2種類のサブタイプ、タイプ1(AT1)とタイプ2(AT2)があります(AUという情報伝達物質を鍵に例えると、情報を受け取るのは鍵穴に相当する受容体になります)。AT1受容体は血管収縮・動脈硬化作用が主体で、AT2受容体はその反対の血管拡張・抗動脈硬化作用が主体です。

AT1受容体

血管平滑筋、肺、肝臓、腎臓、副腎、卵巣、脾臓、脳に分布し、各組織において血圧を維持しようとする方向に働き、血管に対しては血管収縮作用、血管壁肥厚作用、動脈硬化作用、心筋には心筋収縮力増強作用、心筋肥大作用があげられます。

AT2受容体

心筋、細小動脈、脳、副腎、子宮筋などに存在し、特に組織の損傷時に発現が亢進するとされています。各組織において血圧降下作用、血管平滑筋増殖抑制作用、アポトーシス(細胞死)促進作用などを示し、AT1受容体の作用と拮抗しますが不明の点も多いとされています。

循環系RA系の役割は血圧、電解質バランスの機能的変化を担う急性の調節系であり、組織RA系は心肥大、血管肥厚、動脈硬化といった局所の構造的変化(リモデリング)に関与する慢性の調節系として働いていると考えられています。

アンジオテンシンII受容体拮抗薬はAT1受容体にアンジオテンシン変換酵素(ACE)により作られたアンジオテンシンIIが結合するのを妨げ、血管収縮作用、血管壁肥厚作用、動脈硬化作用、心筋には心筋収縮力増強作用、心筋肥大作用などの作用を発揮できないようにします。従って降圧薬としてのみならず、抗動脈硬化薬としても注目されています。

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