ACE阻害薬について

ACE阻害薬は血圧を調節するレニン−アンジオテンシン系という昇圧機構を遮断する他にキニン−カリクレイン系という降圧機構を促進し降圧します。

1) レニン−アンジオテンシン系

腎臓で産生されたレニンは肝臓でできたアンジオテンシノ−ゲンに作用してアンジオテンシンIを産生します。アンジオテンシンIはアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンIIに変換されます。アンジオテンシンIIは非常に強力な昇圧物質であり、ACE阻害薬はアンジオテンシンIからアンジオテンシンIIに変換するのを阻害する事によって(昇圧因子を抑制する事によって)血圧を下げます(下図)。

循環系レニン・アンジオテンシン系の役割は血圧、電解質バランスの機能的変化を担う急性の調節系であり、組織レニン・アンジオテンシン系は心肥大、血管肥厚、動脈硬化といった局所の構造的変化(リモデリング)に関与する慢性の調節系として働いていると考えられています

レニン-アンジオテンシン系
キニン-カリクレイン系
アンジオテンシノーゲン
ACE阻害薬

レニン(腎)

アンジオテンシンT
ブラジキニン不活性化を抑制しブラジキニン増加

組織のキマーゼ

ACE(肺、血管内皮)

アンジオテンシンU
アンジオテンシンU受容体
ブラジキニン2受容体
AT1受容体
AT2受容体
血管収縮
血圧上昇
アルドステロン分泌
利尿作用
細胞増殖
血管拡張
血圧下降
NO産生
細胞増殖抑制
アポトーシス促進
NO産生
プロスタサイクリン合成

2) キニン−カリクレイン系

腎臓、血漿、血管壁等にあるキニノ−ゲンは、カリクレインという酵素によりブラジキニンに変換されます。これが血圧を下げ、水分やナトリウムの排泄を促し、体液量を減少させ血圧を下げます。ACE阻害薬はブラジキニンが不活性分解物になる過程を阻害(降圧因子を活性化)し、血圧低下を促します(上図)。

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