@前立腺肥大症は高齢の男性によく見られる病気であり、尿道が圧迫されて排尿障害をもたらすことが知られている。
前立腺肥大症は年齢と深い関係にあり、40・50代で症状が出始め60歳を過ぎると、半数以上の人が夜間頻尿と放尿力低下を訴える。
【第1病期(膀胱刺激期)】
夜間にトイレに行く回数が多くなる、尿の勢いがない、尿がすぐ出ない、少ししか出ない、時間がかかる(排尿障害)などの症状が出てくる。
【第2病期(残尿発生期)】
尿をした後もすっきりとせず残っているような感じがする(残尿感)といった症状が出てくる。
【第3病期(慢性尿閉期)】
昼夜を問わずトイレに行く回数が増えて、排尿にかかる時間が長くなり、一回の排尿に数分かかるようになる。時には尿が全く出なくなってしまうこともある(尿閉)。
排尿困難や頻尿の種類
症状 |
原因 |
関連性の高い疾患 |
頻尿 |
膀胱容量の減少 |
結核性膀胱炎、間質性膀胱炎 |
残尿の増加 |
前立腺肥大、前立腺がん |
炎症による刺激 |
膀胱炎、尿道炎、前立腺炎 |
神経性 |
神経性頻尿 |
多尿 |
糖尿病、尿崩症 |
排尿困難 |
尿路の器質的障害 |
前立腺肥大症、前立腺がん、尿道狭窄 |
膀胱機姥障害 |
神経因性膀胱 |
A排尿異常の原因に合わせて適切な薬剤の選択をすることが大切。
B前立腺肥大症の治療には、外科的療法と薬物療法がある。しかし高齢者では
手術できないケースもあり、薬物療法の適応が多い。
前立腺肥大症の主な薬
分類 |
作用 |
代表的な商品名 |
抗アンドロジ工ン薬 |
前立腺を縮小させる |
ブロスタール・バーセリン |
α1−ブロッカー |
尿道抵抗を強弱させる |
ミニプレス、ハルナール |
植物成分配合薬 |
刺激症状を改善させる |
エピプロスタット、セルニルトン |
アミノ酸製剤 |
前立腺代謝を促進させる |
バラプロスト |
C器質的尿道閉塞には抗アンドロジェン薬が有効である。
D前立腺平滑筋の緊張を解き尿道抵抗を減弱させるためにはα1−ブロッカー薬が有効。
E排尿困難や膀胱刺激症状といった自覚症状の改善には、補助的に植物成分配合薬やアミノ酸製剤を併用する。
F漢方薬は自覚症状の改善を目的として使われる。とくに残尿感や夜間頻尿には有効なケースがみられる。
G排尿障害のある場合には、鎮痙薬のなかでも抗コリン作用をもつものは尿閉傾向になるので、できるだけ避けたほうがよい。