てんかん
てんかんとは

   WHO(世界保健機構)の定義より。

「さまざまな原因で起こる慢性の脳疾患で、大脳神経細胞の過剰な放電からくる繰り返す発作(てんかん発作)を主な徴候とし、多種多様な臨床及び検査所見 を伴う。」

(a.)さまざまな原因によって起こる病気である。
(b)脳の慢性の病気である。
(c)症状もさまざまである。(繰り返す発作が特徴であり、発作型も色々ある
(d)脳波検査で、てんかん性異常(てんかん波)を認める。
(e)抗てんかん薬を中心とする医学的管理で、大多数の患者は発作から解放される。
    (発作抑制率 75〜85%程度になってきている)




※てんかんの原因

(a)てんかんの基本素因・・・
脳の中には、微小な電気(脳波)が流れており、誰しもてんかん発作を起こす 素質を持ち合わせている。
その中で、素質(素因)の強い人が発病する率が高 くなる。

(b)一次性の原因(原発性、特発性)・・・
生まれつきの素因が関係しているもので、脳には、てんかん発作を起こす原因 となる病変は認めない。
原因がわからない(=特発性)が、予後がよい。

(c)二次性の原因(続発性、症候性)・・・脳に器質的な病変などがある場合。
 たとえば、
出産時の障害(低酸素性脳障害、頭蓋内出血など)、頭部外傷、脳 奇形、脳炎や髄膜炎の後遺症など。
脳の器質的障害が重度(広範囲)なほど、てんかん発作も難治性になりやすい傾向がある。




※てんかんの分類・・・T


・局所関連性てんかん(部分てんかん) …約35%
・特発性全般てんかん(原発性全般てんかん)…約60%
・症候性全般てんかん(続発性全般てんかん)…約5%

予後のよい(抗てんかん剤でコントロールしやすい)のは、
特発性全般てんかん、局所関連性てんかん、症候性全般てんかんの順。



※てんかんの分類・・・U


「全般発作」と「部分発作」とに分けられる。

◎「全般発作」・・・最初から脳全体に発作が広がるもので、
これには大発作(強直間代発作)、小発作(欠神発作)、ミオクローヌス発作などがある。
(1)大発作は突然意識を失い体を硬直させてけいれんを起こす。
俗に言う白目をむいたり、呼吸が停止して、尿失禁を伴うこともある。
全身を突っぱった後、体をガクガクさせるけいれんに移り(間代けいれん)、
発作がおさまった後もしばらく意識が鮮明ではない。
(2)小発作は瞬間的に意識がなくなって動作が止まったりする発作。
(3)ミオクローヌス発作は、上下肢の筋肉の一部がピクピク震える。

◎「部分発作」・・・
発作中も意識のある「単純部分発作」と、意識障害を伴う「複雑部分発作」に分けられる。
部分発作は発作を起こす脳の場所によって症状は様々。
(1)単純部分発作では体の一部がけいれんを起こしたり、痺れや幻聴などの感覚発作、急に恐怖を覚えるような精神発作、腹痛や頭痛の自律神経発作などがある。
(2)複雑部分発作は意識が朦朧として、突然激しく動いたり、口をもぐもぐさせたり、意味なく歩き回ったりする。
1回の発作でも、最初は部分発作であったのが、全般発作に移行していくこともある(二次性全般化)。



※抗てんかん薬


 発作型、脳波、年齢などを考慮して薬を選択。
てんかんの国際分類によって、
その患者のてんかん発作
(特発性全般発作なのか、症候性全般発作なのか、単純部分発作なのか、複雑部分発作なのか)が
正しく診断されれば、その発作に有効な抗てんかん薬も決まる。

てんかんの正しい診断がまず治療を開始する上で何より大切。

一剤の薬でコントロールすることがむずかしい場合は、2剤や3剤を組み合わせて投与する。
薬の血中濃度を測定して、有効な血中濃度を維持しているかどうか調べることができる。
4〜6カ月に1回程度くすりの副作用をチェックするために血液検査、尿検査が必要。


    
一般名 略称 商品名
フェノバルビタール PB フェノバール、ルミナールなど
フェニトイン PHT アレビアチン、ヒダントールなど
カルバマゼピン CBZ テグレトールなど
バルプロ酸ナトリウム VPA デパケン、バレリン、セレニカR
クロナゼパム CZP リボトリール、ランドセンなど
ニトラゼパム NZP ベンザリン
ジアゼパム DZP セルシン、ホリゾンなど
エトサクシマイド ESM ザロンチン、エピレオプチマルなど
ゾニサミド ZNS エクセグラン
アセタゾラマイド AZA ダイアモックス
フルニトラゼパム FZP ロヒプノール
クロバザム CLB マイスタン





※発作型に有効な抗てんかん薬


第一選択薬 第二選択薬 無効薬
強直間代発作 VPA, PHT
ZNS,
CBZ, CZP
PB,CLB
ESM
単純部分発作 CBZ,ZNS
PHT
CZP,CLB,VPA ESM, PB
複雑部分発作 CBZ, ZNS
PHT
CZP,CLB, VPA ESM,PB
欠神発作 VPA,ESM CZP,CLB PB,PHT,CBZ
脱力発作 ESM,VPA CLB PB,PHT,CBZ
ミオクローヌス発作 CZP CLB,FZP,VPA PB,ESM
点頭発作
(West症候群)
VPA,CZP, NZP
VitB6,ZNS,ACTH

PHT,CBZ,PB





※抗てんかん薬の副作用


薬品名 副作用
フェノバルビタール(PB) 眠気、精神活動の鈍麻、多動傾向(学童)
フェニトイン(PHT) 歯肉肥厚、多毛、眼振、めまい、運動失調
肝障害、低IgA血症
バルプロ酸(VPA) 食欲亢進、脱毛、血小板減少、肝障害
カルバマゼピン(CBZ) 眠気、肝障害、たまに薬疹
ゾニサミド(ZNS) 食欲不振、意欲低下、肝障害、発汗障害
ジアゼパム(DZP) 眠気、筋緊張の低下、気道分泌物の増加
クロナゼパム(CZP) 眠気、筋緊張の低下、気道分泌物の増加
エトサクシマイド(ESM) SLE症状、たまに薬疹



※生活上の注意

発作抑制因子:
正しい服薬・長期の服薬・規則正しい生活・適度の運動

発作誘発因子:
睡眠不足・肉体過労・精神緊張・感情過敏・うつ状態・発熱・月経

発作増悪をきたす抗精神病薬:
chlorpromazine:  ウィンタミン・コントミン
imipramine: トフラニール・イミドール・クリミテン・デイプレス
amitriptyline: トリプタノール・ミケトリン・ノイプタール・アミプリン




目次へ


目次へ