※パーキンソン病とは
脳の中の黒質という部分の神経細胞の数が減ることが原因。
ここの神経細胞は、突起を線条体という部分に送り、またドパミンという物質を含んでいるので、
線条体のドパミンが減少。これが色々な症状の原因と考えられている。
ドパミンが減少すると、それに引き続く神経伝達物質であるアセチルコリンとのバランスが崩れ、
アセチルコリンの作用が優位になり、パーキンソン症状が現れる。
また、病状が進行すると、ドパミンからノルエビネフリンを合成する酵素の活性が低下する。
※パーキンソン病の症状
振戦、筋固縮、無動、姿勢・歩行障害が4大症候である。
初発症状は、ふるえ、歩行障害、手足のこわばりなどが多い。
一般に、一側の上肢又は下肢から発症し、病気の進行とともに他側に及ぶ。
症状の左右差は、症状が進行してからも続くことが多い。
振戦の特徴は安静時振戦であり、動作時には減少、消失する。ふるえの頻度は4〜6Hzである。
筋固縮は頸部、上下肢の筋にみられるが、特に頸部の筋、上肢では手指屈筋、回内筋に目立つ。
筋の伸長に対して規則的な抵抗の変化を示し、歯車現象と呼ばれる。
動作は全般的に遅く拙劣となるが、特に姿勢変換時に目立つ。
表情の変化に乏しく(仮面様顔貌)、言葉は単調で低くなり、なにげない自然の動作が減少する。
歩行は前傾前屈姿勢で、歩幅が狭く、速度が遅いが、特に狭い所では障害が目立つ。
進行例では、歩行時に足が地面にはり付いて離れなくなる、いわゆるすくみ足が見られる。
姿勢保持障害は初期には見られないが、ある程度進行するとともに出現し、
少しバランスを崩すと倒れることが多くなる。
※ホーン・ヤールの重症度分類(改訂版)
ステージ 0 |
パーキンソニズムなし |
ステージ 1 |
一側性パーキンソニズム |
ステージ1.5 |
一側性パーキンソニズム+体幹障害(neck rigidityなど) |
ステージ 2 |
両側性パーキンソニズムだが平衡障害なし |
ステージ2.5 |
軽度両側性パーキンソニズム+後方突進があるが自分で立ち直れる |
ステージ 3 |
軽〜中等度パーキンソニズム+平衡障害、肉体的には介助不要 |
ステージ 4 |
高度のパーキンソニズム、歩行は介助なしでどうにか可能 |
ステージ 5 |
介助なしでは、車椅子またはベッドに寝たきり(介助でも歩行は困難) |
※抗パーキンソン病薬の作用
(1)線条体に入ってドパミンに変わるL-Dopa製剤
(2)ドパミンの代わりをするドパミンアゴニスト
(3)ドパミンとアセチルコリンのバランスを直す抗コリン薬
(4)ドパミンの分泌を促す塩酸アマンタジン
(5)脳の中でノルアドレナリンに変わるドプス
※パーキンソン病の治療
病勢の進行そのものを止める治療法は現在までのところ開発されていないので、
症状の程度によって適切な生活指導や薬物療法を選択する。
軽症者では、抗コリン剤や塩酸アマンタジン、ドパミン受容体刺激剤を用いる。
中等症以上では、L−DOPAとドパ脱炭酸酵素阻害剤と合剤とドパミン受容体刺激剤とを併用する。
すくみ足の目立つ例では、L−DOPSが奏功することがある。
L−DOPSは起立性低血圧に対しても効果がある。
抗パーキンソン病薬の経口摂取が不可能な場合は、胃管から投与するが、
それも不可能な場合には経静脈的にL−DOPAを点滴する。
長期治療に伴う問題点として、薬効の減退、薬効の不安定、不随意運動、精神症状がある。
いずれも患者の日常生活や家人の生活を障害するので、適切な対応が必要である。
対策としては、症状の内容やその病態に応じて、薬剤投与回数の増加、ドパミン受容体刺激剤の併用、
抗パーキンソン病剤の増量または減量、抗精神病薬の併用などが必要である。
※パーキンソン病の予後
疾患自体は進行性である。
患者によって進行程度は異なるが、一般に発症してから10年程度は独立した日常生活が可能である。
それ以上になると家人などの介助が必要となることが多い。
生命予後に関しては一般人口の平均余命に近い。
高齢者では、脱水、栄養障害、悪性症候群に陥りやすいので注意する。
生命予後は臥床生活となってからの合併症によることが多く、
気管支肺炎、尿路感染などの感染症が直接死因になる。
※日常生活指導
生活指導として、日常・社会生活の範囲を狭めないように患者、家族を指導する。
特に臥床生活を始めると寝たきりになる危険性が高いので、できるだて臥床生活を避ける努力が重要である。
神経・筋疾患調査研究班(神経変性疾患)より引用