ねこ 【猫】

(1)食肉目ネコ科の哺乳類。体長50センチメートル内外。毛色は多様。指先にはしまい込むことのできるかぎ爪がある。足裏には肉球が発達し、音をたてずに歩く。夜行性で、瞳孔は円形から針状まで大きく変化する。本来は肉食性。舌は鋭い小突起でおおわれ、ザラザラしている。長いひげは感覚器官の一つ。ペルシャネコ・シャムネコ・ビルマネコなど品種が多い。古代エジプト以来神聖な動物とされる一方、魔性のものともされる。愛玩用・ネズミ駆除用として飼われる。古名、ねこま.。

(2)〔猫の皮を張ったものが多いところから〕三味線。
「―が悪くつて困つたに違(ちげえ)はねえのさ/洒落本・妓娼精子」

(3)〔三味線を使うところから〕芸妓。
「猿若町の老(ふる)―が二組さね/安愚楽鍋(魯文)」

(4)大坂堀江付近・江戸本所回向院付近の私娼。
「回向院ばかり涅槃に―が見え/柳多留 」

(5)「猫火鉢」に同じ。

(6)「猫車(ねこぐるま)」の略。

→猫の恋
→猫の額
→猫の目


――に鰹節(かつおぶし)
猫のそばに好物である鰹節を置くこと。安心できないことのたとえ。
――に小判(こばん)
価値のわからない者に高価なものを与えても無駄であることのたとえ。
――にまたたび、お女郎(じよろう)に小判
大好物のたとえ。また相手の機嫌をとるのに一番効果のあるもののたとえ。
――の首に鈴(すず)を付・ける
〔「イソップ物語」から〕鼠が猫の首に鈴をつけるのは至難のわざであること。できない相談のたとえ。
――の子一匹いない
全く人影のないことのたとえ。
――の子を貰(もら)うよう
縁組などが手軽・無造作に行われるさま。
「―にはいかない」
――の手も借りたい
きわめて忙しいさまのたとえ。
――も杓子(しやくし)
なにもかも。だれもかれも。
「―も花見に繰り出す」
――を被(かぶ)・る
本性を隠しておとなしそうに振る舞う。
――を殺せば七代祟(たた)
猫は執念深い動物なので、殺すと子孫七代までも祟るという俗説。

                                                           
三省堂「大辞林 第二版」より