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呼吸
呼吸と肺 *エネルギー産生には酸素が必要である・・・細胞は呼吸している。体全体も呼吸していることになる。
*実際のガス交換は肺胞で行なわれている・・・肺は気道と肺胞とからできている。気道は肺胞に空気を送る単なる通路である。気管支は平滑筋をもっている。気管支平滑筋が収縮したら気管支は細くなる。肺静脈には動脈血が流れている。胎児のガス交換は胎盤で行なわれている。
*反回神経麻痩により嗄声が生じる・・・声帯は反回神経により動かされている。声がかすれたり出なくなることを嗄声という。反回神経麻癌により嚥下障害も生じる。
呼吸運動 *肺は胸腔内に閉じ込められている・・・胸腔は横隔膜と胸壁とからできている。横隔膜は骨格筋でできており、膜状をしている。
*肺は自分自身ではふくらむことはできない・・・胸腔内は弱い陰圧である。胸腔の陰圧が肺をふくらませている。
*胸腔容積が増加すると肺がふくらむ・・・胸腔容積が増加すると陰圧が増強し(つまり胸腔内圧が低下し)その結果肺がふくらむ。
*呼吸筋は横隔膜と肋間筋である・・・横隔膜が収縮すると横隔膜は下にさがる。肋間筋が収縮すると胸壁は広がる。
*乳児と成人男性は腹式呼吸を行なっている・・・主として横隔膜により行なう呼吸を腹式呼吸という。妊婦は胸式呼吸となり呼吸数はふえる。
*患者によっては独特な呼吸が見られる・・・チェーン・ストークス呼吸は重症患者や臨終時に見られる。心臓病などでは臥位より座位の方が呼吸が楽なことがある。
肺気量 *基本的な気量は1回換気量、予備吸気量、予備呼気量、残気量である・・・肺気量はこの4つの基本的な気量の組み合わせである。
*安静時の1回の換気量を1回換気量という・・・安静吸気量から最高に吸い込める量が予備吸気量である、2リットル。安静呼気位から最高にはき出した量が予備呼気量である、1リットル。最高にはき出したときでも肺内に残っている量が残気量である、1.5リットル。
*基本的な気量を組み合わせると実際に役立つ気量が表現できる・・・全肺容量=1回換気量+予備吸気量+予備呼気量+残気量、肺活量=1回換気量+予備吸気量+予備呼気量=全肺容量−残気量、機能的残気量=予備呼気量+残気量
*肺活量は意識的に出し入れできる空気の最大量である、3.5リットル・・・全肺容量はとにかく肺の中に入ることのできる空気の最大量である、5リットル。機能的残気量は安静呼気位で肺の中に残っている空気の量である、2.5リットル。
*1秒間に肺活量のうちどれだけはき出せるかを1秒率という・・・1秒間にはき出せる呼気量を1秒量という。1秒率は肺活量とならぶ重要な呼吸機能検査である。肺活量には時間の要因がある。
拘束性肺障害

閉塞性肺障害
*肺活量が小さくなることを拘束性肺障害という・・・肺活量は性、年齢、身長により予測値が決まっている。予測値を100%としたときの実際の肺活量を%肺活量という。%肺活量が低下したものを拘束性肺障害という。拘束性肺障害では1秒率は低下していない。
*気道がつぶれると息をはき出しにくくなる・・・呼気時の方が気道がつぶれやすい。気道がつぶれても息を吸うのは割に楽である。
*気管支平滑筋が収縮すると気管支は細くなる・・・気管支平滑筋は交感神経によって弛緩し副交感神経によって収縮する。
*1秒率が低下することを閉塞性肺障害という・・・正常では1秒率は70%以上である。閉塞性肺障害ではゆっくりならば多量に息をはき出せる。
*閉塞性肺障害の代表に肺気腫や気管支喘息などがある・・・気管支喘息は気管支平滑筋がアレルギーによって痙攣様に収縮する病気である。喘息発作時は息は吸えるがはき出しにくい。閉塞性肺障害と拘束性肺障害とが合併することもある。
死腔と換気 *肺動脈圧は大動脈圧よりずっと低い・・・肺動脈圧は大動脈圧の1/6程度である。右肺の方が左肺より少し大きい。
*死腔とはガス交換に役立っていない気道の容積のことである・・・吸い込んだ空気のすべてがガス交換にあずかれるわけではない。鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、気管、気管支が気道である。肺胞はすべてが機能しているわけではない。
*1回換気量から死腔量を引いたものがガス交換に役立っている空気の量である、肺胞換気量という・・・(1回換気量一死腔量)×呼吸数=実際のガス交換に役立っている空気の量。
*浅くて速い呼吸より深くて遅い呼吸の方がガス交換の効率はよい・・・死腔が少ないほど換気の効率はよい。気管切開をすると死腔が減少する。
*呼吸数は毎分約18回くらいである・・・新生児の呼吸数は40〜60回/分で非常に多い。
血液ガス *混合気体はその成分量に比例した圧をもっている・・・これを分圧といい、P02やPCO2などとPをつけて表わす。酸素分圧はPO2、二酸化炭素分圧はPC02と表わす。空気は760mmHgの酸素20%と窒素80%の混合気体である。
*気体はその分圧に比例して水に溶ける・・・気体は空中・水中を問わず広がっていく。濃いか薄いかの測定目盛が分圧である。血液中の気体の分圧を血液ガスという。
*純酸素を吸っても肺胞内は酸素100%にはならない・・・肺胞内や呼気ガスはほぼ100%飽和の水蒸気を含んでいる。結局肺胞内の酸素分圧は約100mmHgである。呼吸により水分が排泄されている。ボンベ中のガスは水分をほとんど含んでない。
*肺胞中、動脈中、静脈中の酸素分圧をPAO2、Pa02、PVO2と書く・・・Aは肺胞,aは動脈,Vは静脈のことである。PAO2=100mmHg、Pa02=100mmHg、PaCO2=40mmHg、PVO2=40mmHgである。
呼吸性アシドーシス

呼吸性アルカローシス
*アシドーシスとアルカローシスには代謝性と呼吸性のものとがある。
*二酸化炭素は体内では酸になる・・・二酸化炭素は水に溶けると炭酸という酸になる。肺は酸の排泄器官である。呼吸によりpHは変動する。
*換気量と二酸化炭素分圧とは反比例する・・・換気量が増大するとアルカローシスになる。
*深呼吸を何回も続けると呼吸性アルカローシスになる・・・頻回の深呼吸は換気量の増大をもたらす。
*換気が不十分だと、酸素分圧は低下し、二酸化炭素分圧は上昇しその結果pHは低下する・・・体内で代謝性アシドーシスが生じると呼吸は増える。
呼吸中枢 *呼吸中枢は脳幹にある・・・呼吸回数や呼吸の深さは呼吸中枢が決める。呼吸中枢は脳幹の延髄網様体にある。
*呼吸中枢は主として動脈血の二酸化炭素分圧によって調節されている・・・二酸化炭素分圧が低下すると呼吸運動は低下する。二酸化炭素分圧が上昇すると呼吸運動は促進され、二酸化炭素を体外に追い出そうとする。健常者が安静時に純酸素を吸っても息が楽になったとは感じない。二酸化炭素分圧、酸素分圧、pHなどは脳幹部のみならず、頚動脈や大動脈のような末梢でも感じとっている。
*麻酔薬は呼吸を抑制する・・・脳障害でも呼吸が止まることがある。睡眠中や植物人間では呼吸中枢は機能が保たれているので自分で呼吸することができる。
*重症の慢性呼吸不全患者には酸素を投与してはいけないことがある。