慢性関節リウマチの病態生理
※慢性関節リウマチとは
 慢性関節リウマチは全身の関節を主病変とする炎症性疾患である。寛解、再燃を繰り返しながら、徐々に軟骨、骨を含む関節組織が破壊される。罹患関節は変形し、強直などの症状のために日常生活動作(ADL)が著しく障害される。また、貧血や皮膚潰瘍、間質性肺炎等の関節外症状を併発することがある。
 人口の0.4〜0.5%、30歳以上の人口の1%にあたる人がこの病気にかかっている。 男性より女性に多く認められる、約3倍)。30歳代から50歳代で発病する人が多く認められる。

※慢性関節の病因
 不明。何かの原因で免疫異常が生じ、慢性多関節炎を起こす。リウマチになりやすい遺伝的な素因があり、それにウイルスなどの感染が引き金になっている可能性も考えられている。

※慢性関節リウマチの診断基準
以下の7項目中4項目以上満たすものを慢性関節リウマチと診断。
(1) 朝起きた時に、1時間以上こわばる
(2) 3つ以上の関節の痛みや腫れ
(3) 手関節またはMCP(指節中手間関節)またはPIP(近位指節間関節)関節の痛みや腫れ
(4) 左右対称の痛みや腫れ
(5) 皮下結節
(6) リウマチ因子陽性
(7) 手指あるいは手関節のX線像の変化
●(1)から(4)は6週間以上認められること


※悪性関節リウマチとは
 明らかな慢性関節リウマチが存在し、心、肺、消化管、神経などの内臓病変の症状を呈する病気。


※慢性関節リウマチの分類、予後
@単周期型・・・発症後数週間〜数年間続くがその後軽快し、寛解後ほとんど再発がみられない。
A進行型・・・よくなることがほとんどなく急速に進行し、数年で車イスでの生活や寝たきりになってしまう。(患者全体の10%程度)
B多周期憎悪型・・・寛解と憎悪を繰り返し長期間かけて徐々に進行していく。
C多周期寛解型・・・寛解と憎悪を繰り返し症状に波があるが徐々に良くなっていく。


※慢性関節リウマチの症状
 全身の関節に炎症が起こることが知られているが、初期の頃には関節以外の症状、倦怠感、食欲不振、体重減少、発熱といったものがみられます。その後、朝の手足のこわばり、手指関節の炎症が現れてくる。さらには、全身の関節痛、腫れ、こわばり、しびれなども現れてくる。
 この中の関節痛は、左右対称性(例:右手が痛い場合は、左手も痛くなる)になって現れることも慢性関節リウマチの特徴的な症状の一つ。そして、最終的に関節の変形も起こってきて日常生活にも支障が出てくる。


※慢性関節リウマチの検査
検査する項目
検査でわかることなど
赤血球数
酸素の運搬の役目を担っている赤血球が減少すると酸欠状態になって貧血を起こす。逆に、赤血球数が増えすぎると血液が濃くなって流れにくくなり血管が詰まりやすくなる。
白血球数
体内に細菌などの異物が進入したときや白血病などのときに白血球が増加します。逆に、骨髄の働きが低下したときや脾臓(ひぞう)の働きが高まったとき、薬剤の副作用で骨髄の機能障害が起こったときには減少する。
ヘモグロビン
赤血球の成分であるヘモグロビンは赤血球の増減と同じように変動します。減少しているときは貧血、増加しているときは多血症の疑いがある。
赤沈
さまざまな病気で異常値を示すため、これだけでは診断はできないが、病気のスクリーニング検査として行われる。慢性関節リウマチでも病状とかなり相関するため、よく行われる検査の一つ。

GOT(AST)

心臓、肝臓、骨格筋、腎臓などの細胞に異常があると、増加する酵素です。肝臓障害、心筋梗塞、溶血などの診断の手がかりになる。
GPT(ALT)
肝細胞に異常があると数値が増加する酵素。肝臓・胆道系の病気の診断に欠かせない検査。
γ−GTP
肝臓や胆道系の異常で胆汁の流れが悪くなると数値が高くなる酵素。アルコール性肝障害のとき、著しく上昇する。
クレアチニン
体内でエネルギーとして使われた蛋白(たんぱく)の老廃物です。排泄に障害があると数値が上昇し、腎臓の働きが低下していることをあらわす。
CRP
体内に急性の炎症や組織の損傷があるときに血液中に増える蛋白(たんぱく)の一種です。炎症や組織の損傷、病気の重症度などを見るときに行われる。
RAテスト
血清中のリウマトイド因子を調べる検査。検査結果で陽性なら体のどこかに免疫異常があると考えられるが、この検査だけでは慢性関節リウマチの診断はできない。
骨・関節X線検査
慢性関節リウマチの診断や病気の進行度の判定を行うために行われる検査。



慢性関節リウマチの治療の薬
分  類
特  徴
副 作 用
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs) 即効性があり、痛みがすぐに和らぐ。リウマチの発病初期から関節の変形が進んだ晩期までどの段階でも処方される。あくまでも対処療法。 胃腸障害(特に胃潰瘍・十二指腸潰瘍)には注意が必要。
抗リウマチ薬
(DMARDs)
免疫異常を抑え、外から体内に侵入するウイルス等を攻撃する作用が高まる。効果が現れるまでに時間がかかる。 胃腸障害、発疹、口内炎など。
免疫抑制薬
抗リウマチ薬よりも強く、免疫異常を抑える作用がある。 骨髄抑制、胃腸障害、感染、奇形、腫瘍の危険性など副作用が多い。
ステロイド薬
DMARDsの効果が現れるまで待てない病状や、DMARDsでの効果が得られなかったときに投与を検討。 胃腸障害、満月様顔貌、にきび、肥満、月経不順、多毛、骨折、白内障など。


慢性関節リウマチ薬の服薬指導例

DMARDs 体の免疫系に働いて、免疫が亢進しているときは抑制したり、低下しているときは増強して免疫機能の異常を調整し、関節の炎症や腫れをやわらげる薬。
ステロイド薬 炎症を抑える薬。
NSAIDs 痛みや炎症の原因となる物質(プロスタグランジン)ができるのを抑えることにより痛みや炎症を抑える薬。





日常生活指導

(1)適度な運動と安静も必要・・・関節が痛いからといって寝てばかりいては、関節が固まってしまい、かえって日常生活に支障が出てくる。そのため、適度な運動を毎日することが大切。
(2)食生活は規則正しく、そしてバランスの良いものを・・・肥満は下半身の負担になるので、過食は避け、標準体重を守ることが大切。
(3)冷えや湿度にも気を使う・・・身体が冷えてしまったり、湿度が高くなったりするとリウマチを悪化させる誘引になることがある。


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